私の故郷ーー天津と温州
温州で生まれた私は、7歳の時に天津に行って、小学校から大学まで生活していた。天津と温州はどちらも港町であった。天津は華北平原にあり、渤海湾に面しており、北京に隣接している。中国の四大直轄市の一つであり、昔から様々な人がここに集まり、活気の溢れた庶民文化を醸し出していた。それに対して、温州は浙江省の東南部にあり、山々に囲まれているが、一面は東シナ海に面している。山と海に囲まれたため、瓯越文化という独特な地域文化を作り上げたのである。この二つの異なる土地を私は故郷としている。
天津の庶民文化の象徴は主に二点だと思う。一つ目は、漫才などの芸能が天津の人々の生活に溶け込んでいるところである。天津は「曲芸の郷」と呼ばれている。「茶館」という喫茶室のような空間で、漫才のほかに、快板書、大鼓書など様々な曲芸が一般市民向けに、観衆と身近な距離で上演されている。常に面白いことを言い、人を笑わせるという天津の人々の可愛い性格は楽天的な関西人に似ていると言えよう
二つ目は、天津の朝食の種類が非常に多いことである。特に、煎餅果子のように、作り方も食べ方も簡単な食べ物は、天津の人々のソウルフードだと言える。庶民文化を抱えながら、天津には近代から有名な租界区があり、西洋的な建物が林立しているモダンな一面をもっている。今でも天津の中心街である和平路、観光地として有名な五大道の辺りは昔イギリスの租界であった。

温州の瓯越文化は地域文化であるために、天津ほど名高くないが、長い歴史を経て、穏やかでかつ強靱な文化であった。そこで、特徴的な事柄は三点ある。一つ目は、温州の方言である。古音の多い温州方言は、中国で最も難解で不思議な方言だと言われている。中国国家文化遺産とされた温州鼓詞は、古音の多い温州方言で演じられる芸能である。
二つ目は、飲食物である。海に恵まれているため、温州の人は海鮮の食べ方に頑固と言えるほどの拘りをもっている。海鮮の本来の味を生かすために、調味料はほぼ一番簡単なものしか使っていない。江蟹生、温州魚団子、ワンタンなど有名な食べ物が数多くある。三つ目は、宗教的な雰囲気である。仏教、道教はもちろん、キリスト教、イスラム教そして稀なマニ教まで温州でその姿を窺うことができる。宗教心の篤い温州の人々にとって、お寺などは日常生活の欠かせない一部である。

庶民文化に浸かる天津の人は楽天的な一面をもっている。それに対して、温州の人は山に囲まれているが、海に面しているため、貧しい生活に耐えるだけでなく、故郷から出かけるという海洋的精神を抱え、進出の気鋭も持ち、1970年代の後半から、温州商人として広く知られている。天津育ちで温州商人の子どもとしての私は、性格は天津の人のようだが、温州の人の風習に影響された考えなどが、私の中に潜在しているかもしれない。天津と温州は決して都会と田舎の二項対立ではなく、むしろ都会文化と地域文化の違いだと思い、それぞれ自らの特徴をもち、この両方の文化が私を育ってくれた。
ここで、概況のようなものしか書けないが、この記録を読んで、興味を持って頂けるならば、この二つの場所についてネットで検索頂ければ幸いに思います。最後に、当日ご来場の皆様、会報に記録を載せてくださった方々にお礼を申し上げます。(移情閣中国語講座講師 鄭 洲)
(PDF: 534.03KB)

天津の庶民文化の象徴は主に二点だと思う。一つ目は、漫才などの芸能が天津の人々の生活に溶け込んでいるところである。天津は「曲芸の郷」と呼ばれている。「茶館」という喫茶室のような空間で、漫才のほかに、快板書、大鼓書など様々な曲芸が一般市民向けに、観衆と身近な距離で上演されている。常に面白いことを言い、人を笑わせるという天津の人々の可愛い性格は楽天的な関西人に似ていると言えよう


温州の瓯越文化は地域文化であるために、天津ほど名高くないが、長い歴史を経て、穏やかでかつ強靱な文化であった。そこで、特徴的な事柄は三点ある。一つ目は、温州の方言である。古音の多い温州方言は、中国で最も難解で不思議な方言だと言われている。中国国家文化遺産とされた温州鼓詞は、古音の多い温州方言で演じられる芸能である。


庶民文化に浸かる天津の人は楽天的な一面をもっている。それに対して、温州の人は山に囲まれているが、海に面しているため、貧しい生活に耐えるだけでなく、故郷から出かけるという海洋的精神を抱え、進出の気鋭も持ち、1970年代の後半から、温州商人として広く知られている。天津育ちで温州商人の子どもとしての私は、性格は天津の人のようだが、温州の人の風習に影響された考えなどが、私の中に潜在しているかもしれない。天津と温州は決して都会と田舎の二項対立ではなく、むしろ都会文化と地域文化の違いだと思い、それぞれ自らの特徴をもち、この両方の文化が私を育ってくれた。
ここで、概況のようなものしか書けないが、この記録を読んで、興味を持って頂けるならば、この二つの場所についてネットで検索頂ければ幸いに思います。最後に、当日ご来場の皆様、会報に記録を載せてくださった方々にお礼を申し上げます。(移情閣中国語講座講師 鄭 洲)


移情閣,孫文,記念館
Posted by 移情閣友の会 at
2017年06月26日 20:45
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